霊能者ヴォイス

このお話のご依頼者Hご夫妻は、三男の方(当時13歳)の奇行に悩み、ご紹介でお会いする事になりました。

初回、お母様とお会いする事になったのですが、その姿は大変疲れており、気も弱々しく痛々しい、倒れる寸前の様でした。
「息子さんは?」と尋ねますと、「昨日から、暴れてしまい、怪我をして病院におります。鎮静剤で落ち着いていますが・・今日、一緒には来られませんでした」と言う事・・。H家はいわゆる、地元でも指折りの資産家で、代々の家業の他に色々な方面でも成功を収めているのですが・・。長男、次男、長女、少し歳が離れて三男と、4人のお子さんにも恵まれ、忙しいながらも幸せに暮らしていたのです。
その様な中、一年程前から、三男K君におかしな事が、起こり始めました。最初は、夜中に起きて来て、キッチンで物を食べ始める・・お風呂のお湯に入れない、裸足で外を歩く等から始まったそうです。物は鷲掴みで、貪る様に口に入れ、翌日聞いても本人は覚えていない、お風呂のお湯は適温にもかかわらず、「熱い!熱い!」と温度を下げても入れず、真水でなければ無理・・寒い日でもです。
裸足で歩き、傷ついてもその時は全然、分からない・・。余りの事に、病院で検査も受けましたが、どこも異常がない。精神科の方にも通ったそうです。
診断は「思春期のホルモンバランス等から来る、情緒不安定・ストレス」と言う事で安定剤等の薬が処方され、今日まで定期的に通っているが、酷くなる一方だと言うのです。
この一年に、何回も、自宅の2階の窓から飛び降りたり、運転中の車から飛び出したり、最近では手首を切ったり、偏食が酷くなり、生卵を何個も飲み込み、止めても聞かない・・挙句の果てに、お風呂のタイルの上で眠ると言うのです。いつ、何をするか分からない状態の中、家族は彼から目を離す事は出来ず、途方に暮れている・・と言う状態です。
ご両親は会社を経営していますから、どうしても日中は家に居ることが出来ません。幸い、ご長男は結婚されていましたから、お嫁さんが日中は家で彼と過ごす事が可能でした。
しかし、彼は、学校にも行きませんし、通いのお手伝いさんもこの事態には着いていけず、とうとう辞めてしまいました。こうなると、もう、義姉さんだけではどうにもなりません。男の子ですから、暴れ出すと、力では負けてしまいます。
色々、悩み、専門の施設に預かってもらう事にしたのが、丁度、私のところに来る、少し前でした。
しかし、まもなく、自殺を図り、命も危ない状態になってしまい、施設もお手上げ状態、後は薬で眠らせ、本格的な精神病患者として一生、病院で暮らすしかないという所まで追い詰められてしまったのです。

そして、家族には納得の出来ない出来事が起こったのです。
この自殺で、危ない状態の中、彼がうわ言で「一人連れて行くぞ・・」とそれは恐ろしい声で、何回か呟いたのです。
「しぶといな・・邪魔するな!」「こいつを連れて行くぞ!」そう、呟いたのを、ご両親、兄弟、皆ではっきり聞いたのです。その声はとても彼の声ではなかったと・・。
とっさにお母様は、「やめて!!連れて行かないで!!」そう叫び、その場で倒れてしまったそうです。
何とか、一命を取り留めた彼は、「家に帰りたい・・助けて・・・」と涙して訴えたのです。家族は彼を連れて帰りました。しかし、彼の奇行は相変わらずで、しかもどんどん弱っているような気がする。ご両親はじめ皆、彼のうわ言の事を考えました。そして、もしかして何か霊的な事が関係しているのでは?と考え、いらしたのです。
お母様はおっしゃいました。
「失礼ですが、私達はそう言う事は無頓着で、これまで霊など、信じていませんし、今も複雑な気持ちです・・。でも、毎年、墓参りもきちんとしていますし・・普通に生活してきました。子供達にも、時に厳しくしましたが、愛情を持って育ててきました。
特別の事も望んでいませんし・・もし、霊的な事が関係しているとしても本当にどうしてこの子だけこんな事になってしまったのか・・」泣きながら話してくれました。
「霊は普通は見えないものですし、ハイこれです!と触れるものではありませんから・・信じられなくて良いんですよ・・。本当は、そういう事に巻き込まれず、生活できた方が良いのですから・・。でも今回の場合、実際彼がおかしくなっているのは、その影響です。今から順にお話していきましょう。」私はお母様に言いました。
「2年位前に、何処か新しく土地を購入していませんか?」
「不動産関係の仕事もありますので、幾つか購入、売却等はしていますが・・。」
「今、住んでいる自宅の近くですよ。心当たりありませんか?お婆さんと、娘さんが見えますが・・」
「えっ!・・あります!あります!丁度、自宅と隣接している所の土地を買いました」
「その土地ですよ。元凶は。訳有りで買っていますね?」
「その通りです。」
ここまで話して、彼女は、「主人に連絡を取ります。待ってください。」
仕事のあったお父様も、何とか都合を付け、慌ててやって来ました。その土地には、やはり親子(母・娘)が住んでいたそうですが、殆んど近所付合いはなかったそうです。会っても挨拶もないくらい・・。何代か前は、H家にも近い関係ではあったそうなのですが。ちょっと変わり者で、ご近所でも、煙たがられている所はあったのだと・・。
金銭的な問題からそこに住み続ける事が出来なくなってしまった親子は、別の不動産屋に「知らない人に渡すのは嫌だ。隣とはその昔は縁があったのだから、どうしてもHさんに買って貰いたい。」
改めて聞くと、変な話なのですが、充分な敷地をすでに持っているので、最初は断っていたHさんですが、先方の熱心さと、隣接している土地ですし、丁度、建て増しも考えていたので、それでは・・と言う事になり、結局申し出を受ける形になりました。もっとも、相場の価格で、きちんとした手続きをし、買い取ったのですが・・。
これが私からみれば命取りでしたね。まさに・・。しかも、今まで一度も訪ねてくる事もなかった、お隣親子は、「ありがとうございました。あの土地をお願いしますね。」と菓子折りまで持って挨拶に来たのだそうです。
その後、業者が入り、その家の解体が始まりましたが、 H夫妻は、仕事もありますし、任せ切にしていたのですが、解体の方は「とても女の人が住んでいたとは思えない、まるでゴミ屋敷だった。変なお札も沢山貼ってあって、不気味だった」とH夫妻に話したそうです。 地鎮祭も行い、それこそ、普通に事は進みました。
これまでの自宅にプラスする形で、その土地には、新たな水廻り、お風呂場も含め増築されたのです。
代々続く資産家でしたから、これまで、どうしても古い部分もある屋敷でした。これを期に、特に水周りは近代的、最先端にしたのです。しかし、その土地にそれらを建てた事が更に事態を悪化させてしまいましたね。
お隣の敷地には明治の頃まで、古い井戸があったのです。そして、その家では代々、水神様をお祀りしていました。昭和の最初の頃、跡取りがなく、養子を迎える事になったのですが、この方の代で、その井戸はまるで何も無かった様に、水神の祠もろとも、埋められてしまいました。
そうです。その親子の、夫であり、父になる方です。
「多分、その方はお水の関係で亡くなっていますよ。」私は言いました。
「その後、残された親子は特に、お母様の方が、余り良くない宗教に入っていますね。そこで祀られているのは蛇の関係ですね。」「その土地を買うことによって影響が出てしまったのですが、水周りにしたことで、その力が強く働いてしまったのでしょう。特に男性に出るものです。一番、年下で家にいることの多い、そのお風呂を利用する三男に霊障としてでてしまったのね。今日、お会いできなかったのは、彼に憑いているものの邪魔ですね。」
私は霊視結果を伝えていきました。
そして、日を選び、そのお屋敷にお伺いする事になりました。私が訪ねた日、K君は家に居ました。
しかし、部屋に閉じこもり、顔を見せません。その日は、ご両親、ご兄弟、親戚の何人かも揃って待っていてくれました。私はその姿を見たとき、"この一家は必ず乗り越えられる。K君は助かる。助けなければ。"そう、痛感しました。
色々なご依頼を受けていると、それこそ、色々な方にお会いする事になります。でも、こうして、家族揃って、彼を助けようと集まっているのです。皆、それぞれ仕事もおありです。「子供の一大事なのだから当たり前」と思う方もいるでしょう・・。
でもその当たり前が、なかなか、難しいのです。現実、仕事は仕事なのですから。生活の糧でもありますし、責任もあります。でも、皆、彼の事を最優先して集まっていたのです。
今回のご依頼に必要なのは、この協力体制なのです。ご両親達はその後、色々、調べ、その土地に関する事、その親子の事が事実である事も納得していました。その上で、「どうすれば、息子は助かるのでしょうか?」と。
「今日、息子さんとお話をして、彼に憑いているものをしっかり霊視致します。この件は、おそらく、時間が掛かりますし、またその間、協力が必要です。まず、彼を連れて来て下さい。無理なら私が彼の部屋に行きます。」
当然、彼は頑として出て来ませんでした。私は準備をし、彼の部屋の前に行きました扉を挟んで霊視していきました。やはりそれは大きな大蛇が憑いていました。元々はその土地を護り、住む人を護ってきた蛇神の成れの果てです。元を正せば、人間の落ち度ではありますが、そもそも、H家には関係はなかったのです。
しかし、土地を買うことによって、それらの因縁も憑いてきてしまったのです。ほんとう・・どうせなら温泉でも付いてきてくれれば良かったのに・・(笑)よりによってですよね。 その親子は、無意識に分かっていたのでしょう。そして、日頃から繁栄してゆくH家に対し、嫉みや嫉妬心があったのでしょう。最後に巧みにその土地を押しつけて行ったのです。
「これは少し、時間が掛かりますので、覚悟して下さい。これからいう日にちに彼が大きな行動を起こしますから、彼から決して目を離さないで下さい。昼も夜も、24時間ですよ。私の方で彼に憑いているものを祓い,鎮めます。」
相手が相手なので、時間が必要です。その間,彼の身を守らなければなりません。その為には一人でも多くの協力が必要だったのです。

結果、私が霊視で出したその日にちに、自殺を図ろうとしたり、一番酷かったのは、家にあるバイクで(勿論、無免許!)皆を振り切り、飛び出し、近くの崖から転落しました。常に、何人かで彼の行動を見ていたので、すぐ病院に運ばれ、骨折で済んだのですが。まさに、一家一団となって彼を護ったのです。そして、最後の仕上げの時が来ました。その日、私は再び、H家を訪れました。ここの所落ち着いている、K君と対面し、除霊の仕上げをする為です。
始めると、彼はのた打ち回り、這いずり回り、お風呂場に行きましたが・・。きちんとそれを終える事が出来ました。その姿は・・誰が見ても人間ではありませんでした。
全てを終え、帰った私は、その後、2週間近く、復帰できないほどでしたが・・。K君はその後、元気に、普通の生活をしています。さすがに一ヶ月ほどは、本調子ではなかったようですが、学校も行き・・。H夫妻もご兄弟も元気に暮らしています。もう問題は無くなったとは言え、色々あった土地、特にお風呂場は結局、使う気にはなれず、花壇等にして、自然溢れるようにして・・。

このご依頼は、神仏が絡んだ難しいものでした。確かに霊的なことは私が行いましたが、やはり、彼を、家族を思う気持ちがあったから解決出来たのだと言えます。
彼の危険な日、家族、親戚、常にみんなで24時間、力を合わせて守ろうとしたのですから。これは私には出来ない事でしたし・・。もし、それが出来なければ、命は助かっても、五体満足でいられた確立は低いのですから・・・。
恋人であれ、夫婦であれ、人が人を思う気持ちは、何よりも大切なのだと・・。